セキュリティの分類(1) - 物理セキュリティ -

情報資産を守るのが情報セキュリティであると書きましたが,情報資産を守るには様々な方法で対策をとる必要があります.そこで,情報セキュリティの方法を分類してみます.まず,何に対するセキュリティかという観点から物理セキュリティ,論理セキュリティ,人的セキュリティ,組織セキュリティの4つに分けて記述します.次に,何を目的とするセキュリティかという観点から,予防セキュリティ,臨床セキュリティ,戦略セキュリティの3つを紹介します.

本日は,対象による分類として「物理セキュリティ」について紹介します.

対象による分類

物理セキュリティ

セキュリティの分類の中でもっともわかりやすいのが物理セキュリティでしょう.物理セキュリティとは,情報資産を守るために物理的に対策を行うことです.車であれば,まさに鍵をかける,車庫に入れる,防犯センサーを取り付けるなどの盗難防止のための対策です.

情報セキュリティでも同様です.どのような対策をとっても,情報の入った「モノ」が盗まれたのでは意味がありません.物理的な対策が必要です.いくつかの例を挙げます.

建物や部屋への入退出管理

もっとも基本的なセキュリティです.出社時に社員証を提示し,警備員が確認し,退社時に警備員の確認の元で退社時刻を記入するというのが簡単な方法です.情報セキュリティと言ったとたんにIT(情報技術)で対策を行わなければならないと思い込みがちですが,やろうとしていることが実現できるのであれば,どのような手段でも構わないわけです.ただし,事故が起こったときにどのように対処するのかという観点でも考えておく必要があります.

最近ではITを利用した入退出管理も多くなってきました.社員カードを磁気カードやICカードにして,無人で管理するような方法です.人手を利用する方法に比べてランニングコストが低く抑えられる可能性があり,管理情報を後で参照するために電子化しておくことが簡単にできるという利点があります.有人の費用と比べて効果が望まれるのであれば,採用を考えてみるとよいでしょう.リスクと対策の考え方については後日記述します.

入退出の管理は,管理情報そのものも情報資産になりえますので,この点にも注意が必要です.せっかく入退出管理を行っていても,その管理情報を紛失したり,漏洩したのでは対策が裏目に出てしまいます.
出退社ばかりでなく,コンピュータの設置場所への入退出も考えなければなりません.セキュリティエリアという考え方がありますが,誰が何に触れてよいのかを明確にし,限定された人のみが触れてよいものに触れられるようにすることが大切です.

バックアップの保管場所

バックアップの保管場所を考えるのも情報セキュリティの一つです.コンピュータのシステムがいかに強固に守られていても,バックアップの媒体が盗まれては意味がありません.

バックアップにも機密性,完全性,可用性が必要です.バックアップを機密にする,すなわち権限のある人のみがバックアップ媒体に触れられるようにすること.バックアップを完全にする,すなわち,バックアップの中身が壊れたりしないようにすること.バックアップをいつでも可用にする,すなわち,盗難や自然災害を考慮して,バックアップをいつでも利用できるようにすること.これらを念頭に入れてバックアップの保管場所を考えなければなりません.

物理セキュリティについて説明しました.これは比較的身近なものに置き換えられるため,わかりやすいセキュリティだと思います.次回は,「論理セキュリティ」について書こうと思います.