抑止と防止

文部科学大臣が防犯カメラの設置を呼びかけた」という報道がありました.
しかし,様々なところで批判が相次いでいます.なぜか.それは,カメラが「防犯」には役に立たないからです.

カメラを設置して,記録を残すということは,犯罪が行われた後に犯人を検挙するための手がかりあるいは証拠として有効です.そしてそれを周知することで,犯罪行為の抑止につながります.しかし,防止はできないのです.

つまり,カメラの設置は,犯罪を思いついた人が行為をとどまることにはつながりますが,犯行を実施すると決心してしまった人には役に立たないと言うことです.殺されてしまった後で犯人が捕まっても,亡くなられた子供達は帰ってきません.同じ税金を使うなら,もっと他にできることがあるだろう,というのが大方の批判です.

「犯罪捜査」と「抑止」,そして「防止」を間違えると,手段も間違えてしまいます.
まず出来ることは何か.シルバー人材を活用して,通学路に立っていてもらうということも可能でしょう.交通指導員を増やして,通学路に配置することもできるかもしれません.

カメラを設置するなら,犯罪が行われたときに防止する手段も同時に考えなければなりません.カメラの映像からどうやって今まさに行われようとする犯罪を見つけるのか.ほとんどのカメラには平常な風景しか写らないはずで,そのなかから,どうやって異常行動を見つけ出すのか.さらに,仮にそれが見つけられたとして,どうやって犯行を阻止するのか.ここまで考えて,やっと「防止」の意味が出てきます.

文科相がそこまで考えて言っていたのであれば,取り越し苦労ですが,どうやらそうではないらしいわけです.

「事後」の対応策も必要ですが,改めて,「抑止」と「防止」についてよく考えて速やかに対策を採って欲しいものです.